ワイン試験の基礎問題集

練習問題を作ってみた

日本ソムリエ協会教本「ハンガリーのワイン」

ソムリエ教本の「ハンガリーのワイン」に関する記述での間違いや気になったことについて書いています。

1998年版教本(平成10年)

トカイの説明で p.348 に 貴腐のつかない粒はサモロドニ用に向けられる。 と書かれていますが、多かれ少なかれ貴腐果が含まれるぶどうを収穫して造られるのがサモロドニで、「貴腐の付いた果粒」と「貴腐の付いていない果粒」を選り分けないことからサモロドニと呼ばれています。

選別された果粒はプットニョス(Puttonyos)と呼ばれる26kg入りの背負い桶で醸造所に運ばれ、これをゲンチ(Gönci)と呼ばれる136l入りの樽に何プットニョス加えたかによって甘口の度合が増してくることになる。 と書かれていますが、「26 kg 入り」ではなく「27.2 l 入り」の桶です。27.2 × 5 = 136

フォルディタスの説明では アスーの二番搾りの果汁にマストを加えて再発酵させたものである。 と書かれていますが、アスーの搾りかすにワインを加えて熟成させたものが Fordítás になります。99/2004. (VI. 3.) FVM rendelet に描かれている Tokaji borkészítés ábrája(トカイ ワイン造りのイラスト)が参考になると思います。

規定ではマストも

グレート・プレイン地方の説明に ドナウ河東岸一帯は栽培面積約8万haで、ハンガリーの栽培面積の約半分を占めている。 と書かれていますが、p.345 の概略には ハンガリーのぶどう栽培面積は130,930ha と書かれているので、約半分が8万haになるのはおかしいと思います。

1999年版教本(平成11年)

概略のぶどう生産量・ワイン生産量が1997年のデータに更新されています。

2000年版教本(平成12年)

主な栽培ぶどう品種に幾つかの品種が加わり、品種名のカタカナ表記が変わりました。

新しく加わった Kékoportó(ケークオポルト)がハンガリー固有の品種として紹介されていますが、Kékoportó は Blauer Portugieser〈ブラウアー・ポルトゥギーザー〉とも呼ばれるスロベニア原産の黒ぶどう品種で、ハンガリー以外でも栽培されています。2000年版教本が発行された時には Kékoportó = Blauer Portugieser ということは認識されていたのでは?

ちなみに、白ぶどう品種に追加されている Kiralyleanyka(キラーイレアニカ)は Feteasca Regala のシノニムのひとつです。

1994年に定められた20地域のカタカナ表記が変更されましたが、1999年版教本では正しく書かれていた幾つかの地域名が間違っています。

教本で5番の Etyek-Buda は1997年に定められた地域で、1994年に Etyeki borvidék として定められた地域にブダ地区(Budai körzet)が加わって Etyek-Budai borvidék となったものです。

19番の Hajós-Baja は1994年に Hajós-Vaskúti borvidék として定められた地域の名称が1997年に変わり Hajós-Bajai borvidék として登録されたものなので、1994年に定められた地域名としては間違いになると思います。

参考ページ : 1994. évi CII. törvény a hegyközségekről

2001年版教本(平成13年)

概略のぶどう生産量・ワイン生産量と輸出比のデータが更新されていますが、栽培面積は1998年版と同じ 130,930 ha が使われています。

ワインの法律と品質分類の内容に「1997年のワイン法」の記述が加わり、22地域の名称が並べられています。

参考ページ : 1997. évi CXXI. törvény a szőlőtermesztésről és a borgazdálkodásról, 1999. évi XLVII. törvény a szőlőtermesztésről és a borgazdálkodásról szóló 1997. évi CXXI. törvény módosításáról

2002年版教本(平成14年)

概略のぶどう栽培面積(127,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量のデータが更新されていますが、輸出比(25.7 %)は2001年版教本と同じ数値が使われています。

ぶどう品種の説明で Kékoportó ケークオポルト = Portugieser(ハンガリー固有) と書かれていますが、Portugieser と書いていながら「ハンガリー固有の品種」というのが間違いだと気付かないのでしょうか。

2003年版教本(平成15年)

概略のぶどう栽培面積(91,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量のデータが更新されていますが、輸出比(25.7 %)は2001年版教本と同じ数値が使われています。

2004年版教本(平成16年)

概略のぶどう栽培面積(93,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量のデータが更新されていますが、輸出比(25.7 %)は2001年版教本と同じ数値が使われています。

2005年版教本(平成17年)

概略のぶどう栽培面積(100,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量のデータが更新されていますが、輸出比(25.7 %)は2001年版教本と同じ数値が使われています。

2006年版教本(平成18年)

概略のぶどう栽培面積(88,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量のデータが更新されていますが、輸出比(25.7 %)は2001年版教本と同じ数値が使われています。

主な栽培ぶどう品種のリストに Blauer Portugieser ブラウアー・ポルトギーザー(旧名Kékoporto) と書かれていますが、何故 Kékoporto が旧名になるのでしょう。ハンガリーの品種リストでは Kékoportó が公式名称で、Blauer Portugieser は幾つかあるシノニムのひとつなのですが……。

トカイ・ヘジアリャ地方の記述が詳しくなっていますが、幾つかの説明が間違っています。

p.359 に トカイ・アスー・エッセンシアの上に最上格のトカイ・ナトゥールエッセンシアがある。 と書かれていますが、ナトゥールエッセンシア(Natúresszencia)は公式な名称ではなく、Eszencia が公式名称になります。また、Natúresszencia の最低残糖分が 250 g/l 以上になっていますが、Eszencia の最低残糖分は 450 g/l 以上です。

昔は 250 g/l 以上だったようですが、1997. évi CXXI. törvény a szőlőtermesztésről és a borgazdálkodásról には 450 g/l の記述があります。

トカイ・アスー・エッセンシアの説明では 桶の添加杯数が7〜8プットニョシュであれば可能 と書かれていますが、規定では6プットニョシュに該当する重量(ワイン 100 l に対し 120 kg)を超えていればいいようです。

マーシュラーシュの説明に 上記アスー、または次のフォルディ夕ーシュ用ワインの搾り滓に、マストないしはワインを注ぎ、再醗酵、熟成させたワインで、辛口。 と書かれていますが、アスーやサモロドニの滓(おり、沈殿物)にワインを加えて熟成させたものが Máslás になります。マーシュラーシュが辛口でフォルディ夕ーシュが甘口といった規定はありません。

また、幾つかの地域の名称が変更されているようですが、教本では古い名称のままで更新されていません。

2007年版教本(平成19年)

概略のぶどう栽培面積(83,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量のデータが更新されていますが、輸出比(25.7 %)は2001年版教本と同じ数値が使われています。

2008年版教本(平成20年)

2007年版教本と同じ内容です。

2009年版教本(平成21年)

概略のぶどう栽培面積(83,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量が2005年のデータに更新されていますが、輸出比(25.7 %)は2001年版教本と同じ数値が使われています。

2010年版教本(平成22年)

概略のぶどう栽培面積(78,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量が2006年のデータに更新されていますが、輸出比(25.7 %)は2001年版教本と同じ数値が使われています。

ちなみに、p.346 の ドナウ河東岸一帯は栽培面積80,000haで、ハンガリーの栽培面積の約半分を占めている。 という記述は1998年版教本でも使われていました。

2011年版教本(平成23年)

概略のぶどう栽培面積(75,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量が2007年のデータに更新されていますが、輸出比(25.7 %)は2001年版教本と同じ数値が使われています。

ドナウ河東岸一帯の栽培面積はまだ 80,000 ha あるようです。

2012年版教本(平成24年)

概略のぶどう栽培面積(72,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量が2008年のデータに更新されていますが、輸出比(25.7 %)は2001年版教本と同じ数値が使われています。

2013年版教本(平成25年)

概略のぶどう栽培面積(74,000 ha)・ぶどう生産量・ワイン生産量が2011年のデータに更新されています。輸出比(22.6 %)が変わっていますが何年のデータを使っているのでしょう。

1998年版からずっと変わらなかった概略と歴史・気候・風土・土壌の記述が少し増えています。

p.388 の主な栽培ぶどう品種の説明に ハンガリーで栽培されているぶどうでリズリングの名がつくものには二種類ある。一つはオラス・リズリング(イタリアン・リースリング)で、現在はハンガリーやクロアチア、オーストリアで盛んに栽培されている。一方、ライナイ・リズリング(ライン・リースリング)は、一般的に知られる、ドイツで栽培されているリースリングと同種、またはそれに近い品種である と書かれていますが、2011年のデータを見ると Rizling と呼ばれる品種は他にも栽培されているようです。

p.390 グレート・プレイン地方の説明で使われていた「80,000 ha」という数値が削除され ドナウ河東岸一帯は、ハンガリーの栽培面積の約半分を占めている。 という記述に変わっています。国全体の栽培面積より一地域の栽培面積が大きくなる記述はさすがに放置できなかったようです。他の地域の栽培面積はそのままですが……。

2014年版教本(平成26年)

2013年版教本と同じ内容です。

2015年版教本(平成27年)

ハンガリーの章の記述が大きく変わっています。

p.343 に主なブドウ品種の表があり、栽培面積と主な産地が載っているのですが何年のデータが使われているのか分かりません。プロフィール(以前は概略)のデータは2013年のものが使われていますが……。

主なブドウ品種の説明に ハンガリー特有のフルミント、ハーシュレヴェル、ユファルク、カダルカなどもあり、主なものでは白ブドウは22種類、赤は9種類である。 と書かれていますが、カダルカはハンガリーよりブルガリアで多く栽培されています。ちなみに、表ではカダルカの栽培面積が 1,000 ha になっていますが、2011年の栽培面積は約 640 ha で、2015年の栽培面積は約 370 ha しかありません。

168th MEETING OF THE COMMITTEE FOR THE COMMON ORGANISATION OF AGRICULTURAL MARKETS(PDFファイル) の20ページに栽培面積が大きい上位22品種が載っているので参考になると思います。

ワイン法と品質分類の説明で p.344 に書かれている以下の記述は出鱈目です。

2013年現在、等級は大きく分けて4種類ある。

  • アスタリ ボル(Asztali bor) テーブルワイン
  • ターイ ボル(Tájbor) 原産地表示付きテーブルワイン
  • ミヌーシェーギ ボル(Minőségi bor) 統制保証原産地表示付き高品質ワイン
  • ヴェーデットエレデトゥ ボル(Védett eredetű bor) 統制保障原産地表示付き最上級ワイン

それぞれの用語の日本語訳は以下のようになります。

現在、ハンガリーのワイン産地は保護された原産地名称(OEM)と保護された地理的表示(OFJ)に分類され、OEM として認められたワイン産地のワインは「産地名」と共に Oltalom alatt álló Eredetmegjelölés の表示が必要ですが、伝統的用語としての Védett eredetű bor の表示で代替できます。

ちなみに、Minőségi bor という用語も Oltalom alatt álló Eredetmegjelölés の代わりに使うことができていましたが、2012年8月1日以降に収穫されたぶどうから造られるワインには使うことができません。参考ページ : 2012. évi CVIII. törvény
a szőlőtermesztésről és a borgazdálkodásról szóló 2004. évi XVIII. törvény módosításáról

p.344-347 の「ワインの産地と特徴」に22地域の説明がありますが、幾つかの地域は昔の地域名が使われています。教本で使われている各地域の栽培面積は Az Európai Unió Agrárgazdasága
2003. 8. évfolyam 5. szám(PDFファイル)
の16ページに載っているデータと同じです。

また、各地域の説明に「主な品種」として数品種の名があがっていますが、「主な品種」というには無理がある品種がかなり含まれています。クンシャーグの Bianca〈ビアンカ〉のようにその地域で最も栽培面積の大きいぶどう品種の名が無いこともあるので、かなり古い資料を使っているのだと思います。

参考ページ : 各地域の(2013年の)主要なぶどう品種は Magyarország borvidékei, 2014(PDFファイル) に載っています。

p.346 の[トカイ・ワインの品質区分と残糖分]の表の補足として ※2014年3および4プットニョシュは廃止された。 と書かれていますが、A Tokaj oltalom alatt álló eredetmegjelölés termékleírása にある仕様書を読むと3、4、5、6プットニョシュとアスーエッセンシアは同時に廃止されているようです。

2016年版教本(平成28年)

p.358 の[トカイ・ワインの品質区分と残糖分]の表に Essencia 最低残糖分 450 g/l 以上という記述が加わっていますが、本文ではナトゥールエッセンシアで残糖分も 250 g/l のままです。Essencia ではなく Eszencia です。

2017年版教本(平成29年)

主なブドウ品種の表から栽培面積が削除されています。

p.400-403 の「ワインの産地と特徴」で各地域の栽培面積が Statisztikák | Hegyközségek Nemzeti Tanácsa で公開されている2015年のデータに更新されています。

p.402 のプットニュの説明で「26kg入りの背負い桶」が「27.1ℓ入りの背負い桶」に変わっていますが、27.1 l ではなく 27.2 l です。

2018年版教本(平成30年)

ぶどう栽培面積やワイン生産量などが2016年のデータ(Statisztikák | Hegyközségek Nemzeti Tanácsa)に更新されて内容も一新されていますが、保護された原産地名称(OEM)とワイン地域(Borvidék)をごっちゃにしていて酷い状態です。

教本では22のワイン地域の説明で「ワイン産地の面積」と「栽培面積」を載せていますが、「ワイン産地の面積」のデータは各ワイン地域のぶどう栽培面積で、「栽培面積」のデータは各ワイン地域のぶどうが収穫された畑の面積だと思います。

また、収穫量の単位が「hℓ」になっていますが「q」の間違いだと思います。参考ページ : キンタル - Wikipedia

Termékleírások から OEMOFJ として認められているワイン産地の仕様書をダウンロードできます。

また、OEMOFJ として認められているワイン産地の地図は Oltalom alatt álló eredetmegjelölésű és földrajzi jelzésű borok termőhelyeinek térképi lehatárolása (termékleírások térképi mellékletei) にあります。

Tokaji のように地名の語尾に「i」を付けることで「〜の」という意味になり、Tokaji borvidék はトカイ(Tokaj)ワイン地域(borvidék)ということになります。参考ページ

ちなみに、OEM としての産地名は Tokaj ですが、Tokaji という表示も認められています。

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