ワイン試験の基礎問題集

練習問題を作ってみた

日本ソムリエ協会教本「オーストリアのワイン」

ソムリエ教本の「オーストリアのワイン」に関する記述での間違いや気になったことについて書いています。

1998年版教本(平成10年)

p.337 の概略で1996年の オーストリアのぶどう栽培面積は51,680haで、ぶどう生産量は274,343t、ワイン生産量は211万hℓ、そのうち約89%が白ワインである。 と書かれていますが、Statistik Archiv der ÖWM | Österreich Wein で公開されている Dokumentation Österreich Wein 2000 (Gesamtdokument).pdf の43ページには「73 % が白ワインで、27 % が赤ワインとロゼワイン」と書かれています。

主な栽培ぶどう品種の説明でグリューナー・フェルトリナーとノイブルガーをオーストリア固有としていますが間違いです。

p.338 のクヴァリテーツヴァインの説明で 白ワインはKMW19度以下、赤ワインはKMW20度以下、アルコール度は白・ロゼで9%以下、赤ワインで8.5%以下でなければならない。 と書かれていますが、1985年のワイン法では白・ロゼワインに求められるアルコール度数は 9.0 % 以上で赤ワインは 8.5 % 以上になっています。

また、補糖後は94エクスレ(KMW19度)以下であることで補糖の限度は4.25kg/100ℓ とも書かれていますが、1985年のワイン法ではKMW18度以下、3.5 kg/100 l に制限されています。

3.5 kg/100 l というのは潜在アルコール度数 2.0 % vol にあたり、EU のぶどう地域区分 B に属するオーストリアでの上限です。

p.340 の「KMW糖度」の説明で オーストリアではワインを造る前の果汁糖度を計る単位として、クロスターノイブルガー・モストヴァーゲ(Kloster-neuburger Mostwage、KMW)を用いている。これは純粋な糖としての重量%を示すものであり、果汁を比重計で測定して出す見せかけの重量であるブリックス(Brix)と大分差がある。と書かれていますが、KMW も比重計を使って計られますし、KMW比重計が示す数値もおおよその「重量%」です。比重計が示す数値が同じでも糖と酸の比率が変われば果汁に含まれる糖の量も違ってくるのですから……。

註 : 教本では Mostwage になっていますが正しくは Mostwaage です。2000年版教本で訂正されています。

p.340 のニーダーエステルライヒ地方の説明で 栽培面積は33,398ha、全土の約59%を占めている。 と書かれていますが、33,398 ha は全土の栽培面積(51,680ha)の約 65 % になります。

また、p.342 のブルゲンラント地方の説明では 約19,215haの土地で、全栽培地の約34%を占めている。 と書かれていますが、19,215 ha は全土の栽培面積(51,680ha)の約 37 % になります。ニーダーエステルライヒ地方とブルゲンラント地方の栽培面積にウィーンの栽培面積(731 ha)とシュタイヤーマルク地方の栽培面積(3,587 ha)を足すと 56,931 ha になり、全土の栽培面積より 5,000 ha 以上も大きくなってしまいます。

1999年版教本(平成11年)

ぶどう栽培面積(49,000 ha)、ぶどう生産量、ワイン生産量のデータが1997年のものに更新されていますが、白ワインの比率や各地方の栽培面積は1998年版教本と同じです。白ワインの比率や各地方の栽培面積は何十年前のデータを使っているのでしょう?!

2000年版教本(平成12年)

概略で使われているぶどう生産量とワイン生産量のデータは1999年版教本と同じ1997年のものですが、ぶどう栽培面積は 56,931 ha になっています。ちなみに、56,931 ha は1998年版教本に載っていたニーダーエステルライヒ、ブルゲンラント、ウィーン、シュタイヤーマルク地方の栽培面積を合計した数値ですが、4地方以外の栽培面積も足さないと全土の栽培面積にはならないと思います。

主なぶどう品種のリストに載っている品種が増え、白ぶどう 77 %、グリューナー・フェルトリナー 37 % のようなパーセント表示が加わっていますが、栽培比率とも生産比率とも書かれていないのでパーセントが何を表しているのか何年のデータかも分かりません。Dokumentation Österreich Wein 2000 に載っている1999年の栽培比率のデータに近い数値ですが微妙に違います。

p.468 のカビネットの説明に 最高アルコール度は12.7度 と書かれていますが間違いです。(1999年のワイン法で 13.0 % vol になっていますが以前は 12.9 % vol)

「ワインの産地と特徴」の記述が詳しくなり栽培地方(Weinbauregionen)だけでなく栽培地域(Weinbaugebiet)についても触れられています。

また、栽培地域ごとの栽培面積も載っているのですが何年のデータが使われているか分かりません。ちなみに、Wijngebied Wachau - Oostenrijk | Wijnalbum に書籍のものと思われる画像があるのですが、そこに載っている栽培面積が教本のデータと一致しています。

p.475 のヴェスト・シュタイヤーマルクで造られるシルヒャーの説明で これは、ブラウエル・ヴィルトバッハー種から造られるロゼであり、ワイン法によりこの品種はシュタイヤーマルク地方にだけ許される。 と書かれていますが、シュタイヤーマルク地方にだけというのは間違いです。

ワイン法で規定されているのは Schilcher〈シルヒャー〉という用語はシュタイヤーマルク地方で Blauer Wildbacher〈ブラウアー・ヴィルトバッハー〉のみを使って造られるロゼワインに使うことができるということです。

Blauer Wildbacher は主にシュタイヤーマルク地方で栽培されている品種ですが、他の地方でも僅かに栽培されています。2010年のデータではイタリアでも栽培されていたようですが……。

2001年版教本(平成13年)

概略のぶどう栽培面積が 56,931 ha から 49,000 ha に戻って、ぶどう生産量とワイン生産量のデータは1998年のものに更新されています。白ワインの比率や各地方の栽培比率は1998年版教本と同じですが……。

また、概略には 1985年から新しいワイン法が適用され、1961年制定のワイン法は改廃され、よりドイツのワイン法に近くなっている。 という記述があるのですが、1999年には新しいワイン法(Weingesetz 1999)が施行されています。何故、1985年のワイン法(Weingesetz 1985)のままなのでしょう。

各栽培地域の栽培面積が Dokumentation Österreich Wein 2000 に載っている1999年のデータに変わっていますが、栽培地方の栽培面積は何時のデータが使われているのか分かりません。教本に載っているニーダーエステルライヒ、ブルゲンラント、ウィーン、シュタイヤーマルクの栽培面積を合計すると 58,337 ha になります!!

2002年版教本(平成14年)

概略のぶどう栽培面積(50,000 ha)、ぶどう生産量(364,400 t)、ワイン生産量(2,803,000 hl)のデータが1999年のものに更新されています。2001年版教本に載っていた 1999年は2,870,000 hℓ という記述は削除されずに残っていますが……。

2003年版教本(平成15年)

概略のぶどう栽培面積(51,000 ha)、ぶどう生産量(303,900 t)、ワイン生産量(2,338,000 hl)のデータが2000年のものに更新されています。

2004年版教本(平成16年)

概略のぶどう栽培面積(49,000 ha)、ぶどう生産量(253,100 t)、ワイン生産量(2,531,000 hl)のデータが2001年のものに更新されています。

2005年版教本(平成17年)

概略のぶどう栽培面積(48,000 ha)、ぶどう生産量(259,900 t)、ワイン生産量(2,599,000 hl)のデータが2002年のものに更新されています。

2006年版教本(平成18年)

概略のぶどう栽培面積(48,000 ha)、ぶどう生産量(253,000 t)、ワイン生産量(2,526,000 hl)のデータが2003年のものに更新され、「1985年から新しいワイン法が適用され」という記述が削除されています。

2000年版教本で加わったぶどう品種ごとの栽培比率?が削除されています。

「ワインの法律と品質分類」の記述が少しだけ変わっています。

p.351 のプレディカーツヴァインの説明で 製品のアルコール度数は9度以上 と書かれていますが間違いです。以前の教本では正しい数値の 5.0 % vol だったのですが……。

p.351 にベルクヴァイン(Bergwein)の説明がありますが、傾斜は26度ではなく 26 % です。以前の教本では正しく 26 % と書かれていたのですが……。

また、ターフェルヴァイン以下、各段階のワインに表示が認められている。 と書かれていますが2002年にはターフェルヴァインで Bergwein の表示はできなくなっています。参考ページ : BGBl. I Nr. 141/1999 zuletzt geändert durch BGBl. I Nr. 110/2002

p.352 の「甘口・辛口の表示」の説明で残糖 4g/l 以下のワインをエクストラ・トロッケン(extra trocken)としていますが、p.348 の 現行のオーストリア・ワインの国内法は、EUのワイン法の枠内で運営され という記述が正しいならエクストラ・トロッケンの表示は認められないのではないでしょうか?

2007年版教本(平成19年)

概略のぶどう栽培面積(49,000 ha)、ぶどう生産量(273,500 t)、ワイン生産量(2,735,000 hl)のデータが2004年のものに更新されています。

2008年版教本(平成20年)

概略のぶどう栽培面積(49,608 ha)が2006年のデータに更新され、その総面積のうち70%が白ワイン、30%が赤ワインである。 という記述が加わっています。「70%が白ワイン用ぶどう品種、30%が赤ワイン用ぶどう品種」と解釈すれば良いのでしょうか?

栽培地方と栽培地域の栽培面積も更新されていますが何年のデータか分かりません。全土の栽培面積(49,608 ha)に対する比率で計算すると2006年のデータということになるのですが……。

p.343 のシュタイヤーマルクの説明に 約90%は白ワインを産出し と書かれていますが、シュタイヤーマルクではぶどう栽培面積の 25 % ほどを黒ぶどうが占めているので白ワインが 90 % にはならないと思います。90 % という数値は1999年版教本から同じままです。

ズュートシュタイヤーマルクの説明に 主要品種は、ソーヴィニヨン・ブランであるが、ヴェルシュリースリングやシャルドネも多い。 と書かれていますが、2008年のデータではヴェルシュリースリング(429 ha)がソーヴィニヨン・ブラン(327 ha)より多く栽培されています。

ズュートオストシュタイヤーマルクの説明で 主要品種は、トラミナーである。 と書かれていますが出鱈目です。2008年のデータではズュートオストシュタイヤーマルクで最も栽培面積が大きい品種はヴェルシュリースリング(332 ha)ですが、トラミナーの栽培面積は 39 ha しかありません。

何故か2008年版教本では国名が「オーストリア」ではなく「オーストリー」になっています。2009年版教本では「オーストリア」に戻っていますが……。

2009年版教本(平成21年)

「ワインの法律と品質分類」に DAC の説明が加わっています。

p.335 に ヴァインフィアテルDAC以外には、クラシックとレゼルヴェのサブ・カテゴリーが存在する。 と書かれていますが、クラシックというサブ・カテゴリーは存在しません。教本でクラシックとして説明されているのは各 DAC のレギューラ品の規定になります。

トライゼンタールDAC 2007年ヴィンテージから と書かれていますが、Traisental が DAC として認められたのは2006年です。(2010年版教本で訂正されています。)

2010年版教本(平成22年)

概略のぶどう栽培面積(48,850 ha)が2007年のデータに更新されています。

「認可ぶどう品種とその栽培比率」に載っている栽培比率は2008年のデータですが、何故何年のデータかを表示しないのでしょう?(Statistik Archiv der ÖWM | Österreich Wein で公開されている Dokumentation Österreich Wein 2009 (Gesamtdokument).pdf に栽培面積と栽培比率が載っています。)

p.336 に ライタベルクDAC 2010年から と書かれていますが、Leithaberg が DAC として認められたのは2009年ですし、赤ワインは2008年ヴィンテージ分から DAC Leithaberg として販売することができます。(白ワインは2009年ヴィンテージ分から)

「ワインの産地と特徴」の p.339-342 に載っている各地域の栽培面積は2007年のデータになるようですが、ベルクラント・エスタライヒ地方の栽培面積は 9 ha で2008年版教本と同じままです。(ちなみに教本と同じデータが 7 Elemente der Einzigartigkeit(PDFファイル) に載っています。新しいバージョンは インフォメーション・パンフレット | Austrian Wine にあります。)

p.340 のテルメンレギオン(Thermenregion)の説明で 白用のノイブルガー(500ha)とヴァイスブルグンダーが主要品種だが と書かれていますが、2008年のテルメンレギオンでのノイブルガーの栽培面積は 341 ha しかないようです。ちなみに、500 ha という数値は2000年版教本から使われています。

p.341 のシュタイヤーマルク州の説明で 約90%は白ワインを産出し と書かれていますが、2008年の白ワインの比率は約 75 % です。90 % という数値は2000年版教本から使われています。

2011年版教本(平成23年)

概略に 2007年度のオーストリアのワイン生産地域総面積は52,500ha(ぶどう栽培実面積は45,622ha)で と書かれていますが、2010年版教本では2007年の栽培面積は 48,850 ha だったような……。

ぶどうを栽培していないワイン生産地域(3,650 ha)では何からワインを造るのでしょう?!

2012年版教本(平成24年)

概略のぶどう栽培面積(43,663 ha)が2010年のデータに更新されていますが、「ワインの産地と特徴」の p.380-383 に載っている各地域の栽培面積は2009年のデータが使われています。

p.382 に アイゼンベルクDAC(Eisenberg DAC) 498ha という記述がありますが、498 ha はズュートブルゲンラント(Südburgenland)の栽培面積で、アイゼンベルクDACの栽培面積ではありません。

2013年版教本(平成25年)

概略のぶどう栽培面積(43,663 ha)は2010年のデータままですが、各地域の栽培面積が2009年から2010年のデータに更新されています。

p.380 のノイジードラーゼー DAC の説明で レゼルヴェは2010年ヴィンテージ、クラシックは2011年ヴィンテージから と書かれていますが、レゼルヴェも2011年ヴィンテージからです。

2013年版教本から品質区分の分類が「地理的表示なしワイン」、「保護地理的表示ワイン」、「保護原産地呼称ワイン」になっています。

2014年版教本(平成26年)

ヴィーナー・ゲミシュター・サッツDACの説明が加わっています。

p.358 のベルクヴァイン(Bergwein)の説明に Reserveの表示は、アルコール13%以上のクヴァリテーツワインにのみ認められる。 という記述が加わりましたが、Reserve〈レゼルヴェ〉は別項目で説明しなければならないと思います。

2015年版教本(平成27年)

プロフィール(以前の概略)のぶどう栽培面積(43,995 ha)が2013年のデータに更新されています。

2016年版教本(平成28年)

プロフィールのぶどう栽培面積(44,786 ha)が2014年のデータに更新されています。

2017年版教本(平成29年)

プロフィールのぶどう栽培面積(43,777 ha)が2015年のデータに更新されていますが、43,777 ha はぶどうが収穫された畑の面積になります。

主なブドウ品種の説明が詳しくなっています。

p.158 に黒ぶどう品種のブラウアー・ヴィルトバッハーの説明があり 1923年にフリッツ・ツヴァイゲルト博士がブラウアー・ポルトゥギーザーとブラウフレンキッシュを交配して造りだした品種 と書かれていますが出鱈目です。たぶん、協会では ブラウアー・ヴィルトバッハー (Blauer Wildbacher) | Austrian Wine を読んで説明を書いているのだと思いますが、ブラウブルガー (Blauburger) | Austrian Wine起源の箇所が ブラウアー・ヴィルトバッハー (Blauer Wildbacher) | Austrian Wine の説明にも間違って使われているだけです。(この間違いは日本語版だけのようです。)

「ワインの産地と特徴」の p.161-169 で使われている栽培面積について 栽培面積については2014年11月の統計 と書かれていますが、使われているのは2015年のぶどうが収穫された畑の面積になるようです。

2018年版教本(平成30年)

「ワインの産地と特徴」に2017年に認められたシルヒャーラントDACの説明が加わっていますが、シルヒャーラントDACは2018年には廃止されているようです。

シルヒャーラントDACの規定として教本には [アルコール度数]クラシックは11.0%〜12.0%、シルヒャーラントDACは最低12%。 と書かれていますが、正しくは DAC Schilcherland で造られるワインのアルコール度数が 11.0-12.0 % vol で、Ried の名を伴うワインのアルコール度数が 12.0 % vol 以上になります。

参考サイト

Österreich Wein - Kostbare Kultur 日本語版

オーストリア・ワイン・マーケティング協会のサイトで、ワイン産地、統計資料、ワイン法などかなりの部分で日本語に対応しています。

DAC産地プレス & メディアAWMBの統計アーカイブ

STATISTIK AUSTRIA - Wine

オーストリア統計局のワイン関連のデータ

Bundeskanzleramt RIS Informationsangebote

オーストリアの法律情報システム

DAC の規定は「DAC-Verordnung」で検索すれば見つかります。ワイン法なら「Weingesetz」等で……。

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